『その翌々日の朝、真之は暗いうちに家を出た。途中、根岸の芋坂とよばれているあたりの茶屋でひと休みした。(中略)
この茶屋は「藤の木茶屋」とよばれて江戸のころからの老舗なのである。団子を売る茶屋で、めしは売らなかった。その団子のきめのこまかさから羽二重団子とよばれて往還を通るひとびとから親しまれている。』
『坂の上の雲 八』 −雨の坂− より
終章で真之が立ち寄った羽二重団子の本店は、今も日暮里の駅近くで営業しています。上の写真の右側にある石碑は、正岡子規の句碑です。
『芋坂も団子も月のゆかりかな』
団子は餡と焼の二種類。煎茶と団子二本のセット(462円)と、抹茶とミニ団子のセット(546円)があります。下は煎茶のセット。
団子は同種のもの2本に変更したり、追加注文も可能です。ちなみに明治34年9月4日の『仰臥漫録』には「芋坂団子を買来らしむ(これに付悶着あり)、あん付三本焼一本を食ふ」と、子規が病床で4本食べた記録が残っています。一緒に行った息子はミニ団子2本。子供にはこれくらいがちょうどいいようです。
店内では、ガラス越しに中庭を見ながら食事ができます。後述するように「パワースポット」ということもあるせいか、お客さんの大半が携帯のカメラで中庭を撮影していました。
店内には明治期の資料、子規や真之が訪れていた当時の建屋の写真なども展示されています。会計の際に妻が気づいたのですが、レジで申し出れば文豪たちと羽二重団子との関係を記した資料のコピーを頂けます。今回は「正岡子規と当店」「子規・鏡花と当店」をもらってきました。
<2023年再訪>
約15年ぶりに行ってきました。本店は2019年にリニューアルされ、内装もモダンな雰囲気になっていました。
JR日暮里駅の東口から徒歩数分。そのまま直進すれば子規庵に行くことが出来ます。子規庵見学の際には羽二重団子もぜひ食べに行ってみてください。