書名 |
日清戦争実記 |
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号数 |
第一編〜第五十拾編 |
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編集 |
島田薫、河村直、他 |
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出版 |
博文館 |
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初版 |
明治二十七年八月三十日 |
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付図 |
無し |
博文館が日清戦争開戦直後の明治27年8月から発行していた雑誌。小川一真(後に「日露戦役海軍写真帖」を発行)が海外から持ち込んだばかりの写真銅版印刷を初めて導入した写真雑誌であり、当時の反響は非常に大きかったようです。第八編の表紙には「第七編迄印刷総高百廿八萬部●第八編廿四萬部印刷す」と書かれています。第十編以降は印刷部数が書かれていないので全50編の発行総数は分かりませんが、その後も各編20万部ずつとして単純計算すると一千万部以上は売れたのかもしれません。
掲載写真は4〜5ページと少なく、また文中の挿絵もほとんどありません。読み物として見るのであれば「日露戦争実記」の方が充実しているように思えます。ただ、興味深いのは日清戦争当時の軍人の肖像写真。同じ人物でも日露戦争当時の写真と比べてみたときに、「斉藤実は10年で随分太ったなぁ」とか、「これが長岡外史!?」などなど、意外な楽しみ方がありました。
我が家にある日清戦争実記は写真のような合本版で、5編ごと全10冊に纏められています。
今まで古書市場で見かける合本は収録号数がバラバラなものが多かったため、「合本」というのは当時の所有者が自分で製本した物だと思っていました(以前購入した資料の中には手製の合本もいくつかあります)。しかし、実際手元に届いた実記を見たところ、出版社が製本した合本版でした。第五十編巻末にこの合本版の広告が出ています。そこに「部数僅少に付至急御注文の程希上候」と書かれているので、発行部数が少ない珍しいものなのかもしれません。
日清戦争実記には、漢詩や和歌を掲載した「文苑」という章があります。第四編には正岡子規の「進軍五首」「凱歌五首」が掲載されていました。
また、第六編には「すさましや弾丸波に沈む音」「稲妻や敵艦遠く逃げてゆく」など「海戦十首」が掲載されています。この他にも勝海舟が出征する山県有朋に送った歌、乃木希典が陣営で詠んだ歌なども掲載されています。