騎兵将校の使命

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(陸軍乗馬学校長として学生に講述)

  騎兵将校は直ちに軍の耳目となり、実地に自ら地形を視察判断し、敵情を実視するを以て、精確なる状況判断をなすを得べし。故に軍司令官の意図を體し、必要の時機に際しては、自ら作戦を計画して具申し、軍の作戦計画の基礎となさざるべからず。自ら作戦計画を定る能力なければ、完全にその任務を尽くすこと難し。
 二十七八年戦役中旅順攻撃前、予は捜索騎兵として、絶えず旅順方面の地形偵察に従事せり。而して該半島の略図を作り、敵情に照らし、自ら作戦計画意見書を軍司令官に提出せり、軍司令部に於いては毎日騎兵の報告を待ち、予が帰宿する時刻には、将官及び参謀官の来りて、早く報告を聞かんことに勉められたり。
 この如く騎兵の報告は、戦時最も必要なるものにして、該時予の提出したる意見はこれを審議せられたり。