2017年3月に古書店で入手。青焼き印刷の「欧米視察報告第十二号」と手書き原稿の「製艦計画上参考の件」の2つの冊子です。(リンク先にPDF掲載しています)
青焼き印刷で14ページ(潜水艦などの略図もあり)。第一次大戦中の欧米視察で、イギリス滞在中に書かれた報告書です。
欧米視察の詳細については伝記の追憶編「秋山将軍欧米視察旅行記」に掲載しています。また、内容が伝記とほぼ同じためサイトには掲載していませんが、「小柳資料」の山梨勝之進の証言にも当時の様子が書かれています。
この報告書は、イギリスで軍港や造船所を訪れたときに見聞きした軍艦の建造状況、新兵器などを纏めた物のようです。内容についてはもう少し読み込んでから紹介していく予定です。
手書き3枚。詳細不明。内容から書かれた時期は第一次大戦中、「欧米視察報告書」と同じ頃(大正5年6月)と思われます。6月10日頃、真之ら一行はユトランド沖海戦から凱旋したゼリコー大将の旗艦を訪問しており、そこで見聞きしたことを(残念ながら書いたのが誰なのかは分かりませんが)報告書としてまとめた可能性があります。
崩し字は読めないので3年ほど放置していましたが、AIによる文字認識サービス(「AI 手書きくずし字検索」など)が利用できるようになったので、参考にしながら読み進めました。一字一句の認識はできていませんが、大まかな内容は以下の通りとなります。
北海海戦(ユトランド沖海戦)に於いて、クイーン・メリーなどの堅艦が砲戦開始後わずか数分で爆沈した珍事は一般に意外視されている。各艦の爆沈は、砲塔または砲塔付近の甲板に命中した敵弾爆裂の余焔が揚弾薬筒を通って火薬庫内の火薬を爆発させたことに因るものであることに疑う余地はない。英国海軍の将軍連中も「発射速度の急速を欲して、換装室と火薬庫を最短路で直通させたことで、火焔防御方法を設けなかったことが今回の惨劇を生じた主因である。今後は多少の発射速度を犠牲にしても、ぜひ揚弾薬筒内の自動防火扉を設置するなどの方法によって、火焔防御を充分なものにしなければならない」との意見を有している者が多い。なお聞くところによれば、ドイツ艦の射撃は誠に正確かつ精度調整も見事で、一弾のように集中させ、また遠距離戦に於いて落下角の大きな命中弾を上甲板に貫通させて艦内に大被害を与えた。砲の精度に関しては種々批評があり、その効果が如何なものか断言しきれないが、上甲板に落下する命中弾に関しては研究が必要であると思う。
以上、北海海戦が製艦計画に与える有力な教訓として報告する。