陸軍操典全書

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陸軍操典全書

書名

陸軍操典全書

著者

厚生堂編集部

出版

厚生堂

出版年

大正三年



 手帳サイズの操典集。歩兵操典、騎兵操典、野戦砲兵操典、重砲兵操典草案、工兵操典、輜重兵操典が収録されています。大きさは意外と小さく、ニンテンドーDSとほぼ同じ大きさ、厚さです。裏表紙には「第三中隊●●●軍曹」と所有者名が書かれているので、一般兵の持ち物だったようです。
 内容としては各種戦闘の注意点や、教練のように「号令で何をしろ」など一挙一動に至るまで、どの操典も記載項目が250〜300以上もあります。二十八糎砲の射撃手順も、各員の役割分担まで詳しく載っています。

陸軍操典全書見開き


 この全書では明治40年代〜大正初期にかけて改訂された操典が収録されています。そのため日露戦争当時の状況を知ることは出来ませんが、改定前の内容と見比べることで日露戦争が操典改訂に与えた影響を読み取ることもできます。
 例えば騎兵操典。この全書で明治45年の改訂版が収録されています。冒頭に「最近戦役の実験に稽へ茲に騎兵操典を改定す」とあるように、日露戦争で得た経験をもとに改訂がなされたようです。明治31年版は「総則」から始まりますが、改定では「綱領」から始まります。その「綱領」の第二項、「第二 騎兵の主眼は乗馬戦を以て敵を圧倒殲滅するに在り。然れども状況に適せざるときは徒歩戦を用い以て戦闘の目的を達せざるべからず」と、以前の操典にはなかった現実的な記述が登場しています。馬を下りて戦った秋山騎兵の教訓が生かされているようですね。