長江航泊心得

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書名

長江航泊心得

著者

秋山真之

出版

水交社

出版年

明治四十三年



 水交社記事の付録で、わずか19ページの冊子。これも数少ない秋山真之の著作物です。手元にある「軍談」「海軍英文尺牘文例」を入手する数年前にネット古書店で見つけたのですが、予算の都合で購入を断念。どうせ誰かの手に渡るなら価値の分かる方にと思って、MVさんにこの本が市場に出ていることをご連絡しました(その経緯はMVさんのページに書かれています)。
 それから6年ほど経って、再び販売されているのを見つけてようやく自分でも入手することが出来ました。「アメリカにおける秋山真之」(島田謹二 著)に書かれていて以前から探し求めていた真之の著作は、「海軍基本戦術」「海軍応用戦術」「海軍戦務」など入手困難な海軍大学校のテキストを除くとこれで揃ったことになります。

 内容としては、発行直前までの音羽艦長時代(明治四十一年〜四十二年)の経験をもとに、長江流域での航行、碇泊、擱座に関する注意点をまとめた実務書です。戦略、戦術的なことは一切書かれていません。
 「鈴木貫太郎自伝」に、真之が艦長を務めていた頃に音羽が座礁したことがあると書いてあったので、それでこのようなものを書く気になったのではないかと考えています(なお、座礁の原因は現地で雇った中国人の案内人にあったようで、貫太郎が委員長を務めた査問会で真之はお咎め無しとなっています)。ただ、この冊子の発行は明治四十三年ですが、緒言の日付は音羽艦長在職中の「明治四十二年九月」。音羽座礁事件が何年何月か調べ切れていないので、もしかしたらこれを書いた後で座礁してしまった・・・なんてことがあったのかもしれません。

擱座した船の説明図。もしかしてこれも真之の実体験?