「坂の上の雲」登場人物
五十音順一覧表　【く】

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陸羯南【くがかつなん】

	出身地	弘前藩		出身校	司法省法学校
	生没年	１８５７年～１９０７年

本名は中田実。東奥義塾を経て明治９年に司法省法学校に入学したが、校長に反発し加藤恒忠、原敬らと退校する。その後は太政官文書局、内閣官報局に勤務するが、明治２１年に依願退職し、翌２２年に新聞「日本」を創刊して社長兼主筆となる。国民主義を唱え、近代ジャーナリズムの先駆けとして明治言論界をリードした。明治２５年、学友加藤恒忠の甥正岡子規を自社へ入社させ俳論発表の場を与える。その後も公私両面で正岡家を支援し続けた陸は、子規にとって「生涯の恩人」とされている。囲碁下手　人格、見識、文章などすべてにおいて羯南に敬服していた子規も、彼の囲碁の腕前については『妙だね。すべてに修養が行き届いているのに、碁だけ磨けていないと思われる』と評していた。羯南は下手なばかりか、時々一生懸命ペテンをやっていた。囲碁仲間の国分青厓や福本日南にも全く勝てず、上達もしないので、日南が碁をやめるように勧めたが、羯南は「碁はやめてもいいが、助言をするのはやめない」と言って、下手にも関わらず、彼らの碁に口を挟み続けた。

草間時福【くさまときよし】

　１８５３年～１９３２年。慶応義塾を卒業し、明治八年に松山中学校の前身となる松山英学所の所長に着任。松山中学校長在任中、新聞で政府批判を行い禁固刑となったほか、学内の論客と共に公開演説を行うなど民権運動にも携わったため、明治十二年に契約満了の名目で松山中学を去ることとなった。草間退官後、失望落胆した生徒らが次々に県外に遊学し、学生数は二年で半減したという。退官後、草間は朝野新聞の記者や東京府会議員などを務めている。

黒井悌次郎【くろいていじろう】

	出身地	山形県		海軍兵学校	１３期
	生没年	１８６６年～１９３７年		海軍大学校	甲種５期
	最終階級	海軍大将		日露戦争時	海軍陸戦重砲隊指揮官
旧藩校の興譲館中学を経て海軍兵学校に入学。高千穂、武蔵に乗艦の後、海軍大学校に進んだ。海大卒業後は主に軍令部、海軍省などで軍政手腕を発揮している。日露戦争では海軍陸戦重砲隊指揮官となり、旅順攻撃では要塞および港内のロシア艦隊砲撃で大きな戦果を挙げた。戦後はロシアに公使館付武官、敷島艦長、横須賀工廠長、舞鶴鎮守府司令長官などを歴任し大将に昇進している。旅順の手柄　旅順砲撃では現場指揮で活躍した永野修身の手柄を横取りしたと言われている。その他にも傲慢な態度を取ることが多く、部下からの評判は悪かったようである。

黒木為楨【くろきためもと】

	出身地	薩摩藩		陸軍士官学校	－
	生没年	１８４４年～１９２３年		陸軍大学校	－
	最終階級	陸軍大将		日露戦争時	第一軍司令官
戊辰戦争では小銃隊を率いて幕府軍と戦い、鳥羽街道や宇都宮での戦闘で卓越した指揮能力を発揮。維新後に近衛歩兵第１大隊長、近衛歩兵第２大隊長、広島鎮台歩兵第１２連隊長を務め、西南戦争では衝背軍の先鋒として薩摩軍背後への上陸作戦を遂行した。その後、近衛歩兵第二連隊長、中部監軍参謀、参謀本部管東局長、歩兵第五旅団長などを歴任。明治２７年には第六師団長として日清戦争に出征し、威海衛を陥落させた。その後は近衛師団長、西部都督、軍事参議官を務め、明治３７年に日露戦争が勃発すると第一軍司令官に抜擢される。緒戦の鴨緑江から奉天まで主要会戦を戦い抜き、その勇名は海外まで知れ渡った。戦後は再び軍事参議官となり明治４０年には伯爵に陞叙されるが、明治４２年には元帥に列せられることなく後備役編入となる。退役後は枢密顧問官を務めた。詳細情報　黒木のエピソードは個別ページ「黒木為楨」に掲載。

クロパトキン【くろぱときん】

	出身地　　ロシア
	生没年　　１８４８年～１９２５年
	全名　　　アレクセイ・ニコライヴィッチ・クロパトキン
第一幼年学校を経て１８６６年に陸軍士官学校を卒業。トルキスタン第一狙撃大隊に配属され、１８６８年にはサマルカンド征討に従軍した。１８７４年に陸軍大学校を第一優等生として卒業後は、サハラ遠征やコーカンド遠征に従軍。露土戦争では第１６旅団参謀長として軍功を立てるが、重傷を負っている。その後は参謀本部アジア部長、陸大校長を務め、１８８１年にはトルキスタン狙撃旅団長としてトルキスタン遠征に従軍した。１８８３年から約８年間の参謀本部勤務を経て、１８９０年にザカスピ州総督兼軍司令官、１８９８年には陸軍大臣となる。日本との戦争には消極的であったが、開戦直前に満州軍総司令官に任命されて出征。後退戦術で日本軍を満州北方まで誘い込む戦術に出たが、消極的な作戦が裏目に出て各会戦で敗退。奉天会戦後には第１軍司令官に降格となった。その後、第一次大戦で再び軍司令官として前線に出るドイツ軍に敗北。１９１７年の２月革命で逮捕・釈放されると、軍を去って教師として余生を送った。野戦指揮官として　若手将校時代のクロパトキンは、野戦指揮官として多くの軍功を立てている。露土戦争では旅団参謀長という立場でありながら決死隊の指揮官として最前線で敵と白兵戦を繰り広げ、その後敵の砲撃で重傷を負った。一時は「クロパトキン戦死」との誤報が本国に伝わり、追悼文が新聞に載ったという。日本軍司令官の評価　戦後、クロパトキンは自ら日露戦史を記して皇帝に捧呈したが、内部告発的な内容であったためその公開は禁じられた。その後、外国の通信社員がその一部を入手し、さらに日本の新聞社が現地特派員にその概要を打電させて「クロパトキン将軍の著はせる日露戦史」として出版した。　その内容は「戦史」「戦記」というよりも「弁明書」に近い内容であり、将兵の士気の低さや指揮官達の稚拙な戦術が日露戦争の敗因であると論じている。これを読んだ奥保鞏は次のように批判している。「彼の言うとおり兵が怯懦だとか軍令が行われていなかったということが事実だとしても、今になって徒に罵らなくても、将軍として取るべき手段方法はあったはずだ。皇帝に上申して進退を伺うとか、部下を軍律に問うとか、その他にも色々ある。もし軍令が行われずに士気を喪失して遼陽会戦で敗れたとしても、奉天会戦までは数ヶ月の期間があったのだから、その間に問題は解決できたはずである」　一方、野津道貫は遼陽に於いて巧妙に軍を撤退させた点についてクロパトキンの力量に一定の評価を与えると共に、陸相として戦争に反対したにも関わらずその地位より下の総司令官に任命されて戦場で戦う事となり、さらに総司令官を罷免されたあとも一軍の司令官として戦い続けた立場にも同情的な意見を述べている。真之に励まされる　第一次大戦中、欧州視察でロシア戦線訪れた秋山真之は、現地司令官のクロパトキンに会談申し込んだ。この時の様子を山梨勝之進は次のように回想している（「小柳資料」より）。『当時のクロパトキンは頬が落ち、肉は痩せて皮膚はたるんで気勢があがらず昔の面影はなかった。彼は挨拶して「いろいろ連合国に御世話になっている。よく見ていってくれ。日露戦争ではあなたがたサムライと戦った。いまはドイツの盗賊と戦っている。実に不愉快だ。然しどうあってもこの戦は負けられぬ」　秋山将軍はこれに対して「自分は戦争運のよい男だ。自分の行ったところは必ず勝った。あなたも成功されるに違いない」と励まされた。しかし、その後の戦ではクロパトキンは余り名声を発揮しなかったようである。』